長男とは、朝5時起きをして船釣りに行った。娘たちはジジババに任せて。
好天に恵まれて、澄み切った青空のもと、船で海を進む。学校のことや習い事のこと、好きなゲームの話、話題が途切れずにコミュニケーションもとれてうれしかった。釣り中も、エサのつけ方や、釣るコツ、魚や遠くに見える船やタンカーの話。そんなことをとりとめも無く話す。
ただ、長男も俺も元嫁の話題は一切しない。長男も彼にとっては母親に例えばどう怒られたとか、こんな面白いことがあったとか、話題にしそうなものだがしない。これは彼なりに俺と元嫁の関係を慮ってのものなのか。ただ、思い浮かばないだけなのか。。
おそらくは前者だと思う。がさつに見えて少し神経質な長男は、雰囲気を読んでいるんだと思う。子供にはいかんともしがたい大人の事情。自分勝手な大人の事情に振り回された子供。それが本当に可哀想に思えて、申し訳なく思った。
ただ、今更何を思っても仕方ない。切り替えて一生懸命に長男との今の時間を楽しむことに集中した。それが、彼にとっても良いことだと思ったから。
朝5時起きで船上に午前中おり、13時頃に帰宅。娘たちが丁度、お昼寝から起きたところだった。
朝俺がいなくて寂しがったかどうか、ジジババに聞く。
全くそんな事は無かったと。。
少し悲しくもあったが、寂しがらせてなかったならばよかった。
そしてジジババにも感謝した。俺一人では到底、こんなに良い思いを子供達にはしてやれない。
そんなことを思っていると、娘たちから「くまさん遊び」を所望された。くまさん遊びとは俺がクマになり、四つん這いの格好になり、娘たちを背中に乗せ、廊下を何度も行き来する遊びだ…。
釣りで疲弊した身体には辛い遊びだったが、努めて笑顔と優しい口調で一生懸命、娘たちと向き合って遊んだ。娘たちの笑顔と嬌声は何物にも代えがたいものだし、面会が終わったらしばらくこんな幸福な時間は過ごせないのだから。。
そうこうしているうちにお別れの時間。
Times のカーシェアーに乗せて、元嫁の元に送り届ける。
途中、一番下の娘が、夜道に寂しくなったのか
「ママに早く会いたい…。」とべそをかき始めた。
まだ2歳の娘には、二泊三日は少し長すぎたか。。
「もうすぐ着くから…」と言いかけたところで、
真ん中の娘が「今、パパが送ってくれてるでしょ!すぐ着くから我慢しなさい!」と一喝。
下の娘も「うん、我慢する…。」と素直に従う。
長男は助手席で窓の外を見つめながら「もうちょっとだぞー」と呟く。
それぞれの歳でそれぞれの辛さを抱えている。ただ、辛さだけではなく、励ましあって信頼しあって、支え合っている兄妹。頼もしくもあり、申し訳なくもあり。複雑な思いがおこった。
元嫁の家に到着し、元嫁の姿が見えるや、娘二人は元嫁に飛びついていく。長男も俺から渡された少し重いバッグを一生懸命に持ちながら、足早に向かっていく。
娘達が元嫁に連れられて、家に入った。長男だけが入り際にこちらに視線をよこし、少し笑ったような困ったような顔をして俺と目を合わせると、家の中に入っていった。