土曜日の朝に、家を出ることにした。
子供たちになんて言えば良いか、相当悩んだ。子供がわかるレベルで離れて暮らすことになること、ただし、月2回の頻度で会えること。「なぜ?」と言われたときの回答。不安を与えない言い回しとは?。でもウソはつけない。
2,3日フレーズを考えたが、良い案が浮かばずに、ネットに頼ってみた。色々な実例や言い回しがでてきたが、一番シンプルで心に響く言葉を選ぶことにした。
そして朝起きて、朝食を皆で食べ、子供と嫁は嫁の実家に遊びに行く準備をする。
そして準備が整って、俺が子供たちを呼ぶ。
「大事な話があるんだ。今日からお父さんは、みんなと一緒に住めなくなるんだ、少し遠くで皆と離れて暮らす。」
7歳の長男だけが、意味を理解した。「えぇーっ」と小声を発し、顔を曇らせ、俺を見つめている。
「お父さんとは、月に2回会えるから心配しないで良いよ。それにお父さんはいつまでもお前たちのお父さんだから心配しなくていい。」
2回という回数が出たのか、顔が少し和らぐ長男。
「声が聞きたかったら、いつでも携帯でメールしてもいいし、電話かけてもいい。」
「友達になんか言われても、お父さんはいる、ただ離れて住んでいるだけと答えればいい。」
わかった・・と一言いう長男。
2歳と3歳の娘は、途中から俺の言葉に飽きて、嫁にじゃれついている。理解できるはずもない。
「じゃあ、出かけてきな。」
そういって、外出を促す。嫁はあからさまに嬉しそうな顔をしている。忌々しい。
玄関を開けて、外に出かけた長男が、振り返り一言。
「月2回は絶対に会えるんだよね!」
泣きそうになったが、必死でこらえ、「おう!会えるぞ。遊ぼうな!」と言った。幸い、俺の声は震えずに絞りだすことが出来た。
正式に嫁との離婚は成立していないが、俺の中では離婚が成立した。
荷物をまとめ、スーツケースにぶち込み、俺も実家に足を向けた。